久しぶりに電話をかけてきたHの声が、寂しく聞こえた。
Hは毎週のように遊びに行く箱のDJ。
知り合ってから意気投合して、よく一緒に夢を語り合っていた仲間の一人。
Hにはもう6年にもなる彼女がいたし、よく一緒にクラブに来ていたから、
私にとっても憧れのカップルだった。
そんな二人が別れたという事実。
一瞬何て声を掛けようか迷った私に、Hは続けた。
「彼女はずっと結婚したがっててさ。
でも俺、まだまだDJだけで食っていけるほど成長出来てないし、不安だったんだよ、男として。
彼女はずっと応援してくれてたし、時期が来たらちゃんとプロポーズするつもりだった。
だけど、、。」
「だけど・・・?」
「もう、待てないって言われてさ・・・。
彼女は若いうちに子供が欲しいって。だからって、「じゃあDJ辞めるよ。」なんて、
簡単に言える訳ねぇし、かっこわりぃじゃん?
だから俺、待っててくれっていえなかったんだよ。」
「彼女は何て?」
「DJを続けるなら応援するから、って。
だけどこれ以上一緒に居ることは出来ない、って。訳わかんねー」
電話越しにカチッとライターの音がして、私も同時に手元にあったタバコに手を伸ばした。
―フゥー。
煙を吐き出した私は少し落ち着いて、自分の頭で整理した思いを素直に伝えた。
「愛を取るか、夢を追いかけるか。そういう選択って簡単に出来るものじゃないよ。
だけど、女にリミットがあるのも、なんとなく納得出来るんだ。」
するとすぐに、
「っんだよ。お前もかよ。女って、マジわかんねーよ。」
少し口調が変わった事で、イライラしてるHを想像出来た。
「うん。わかんないと思う。でも、女ってそんな生き物だって思う。
でも分かって。そんな自分に一番困ってるのも、女なんだよ。
彼女はあんたの事本気で応援してるからこそ、言ってくれたんだと思うんだけど。」
「・・・・・。」
「彼女はきっと、自分じゃ待ってあげられないかも、ってひたすら悩んでさ。
相手は夢を追いかけたい。自分は結婚したい。
悩んで悩んで、答えを出した。
“応援しよう”って。
自分の事ばかり考えてる女だったら絶対に言えない言葉だよね。
彼女だって悲しくない訳ないじゃない。」
「そうかな。。。」
「そうだよ!でも、だからって、DJ諦めて結婚したところで相手を幸せに出来ないのならもっと悲しいこと。そうじゃない?だからあんたが選んだ答えは間違ってなかったんじゃないかと思うよ。夢を絶対に叶えるって決めた時点できっと何かリスクを背負ってるんだよ。
でも、だからこそ、本気で頑張れるものだと思う。」
「・・・だよな。俺、本気で有名になりたいんだよ。
アイツの事まだ忘れたくても忘れられないから、
早く有名になってその時にだめもとでプロポーズしに行く!」
「そうだよ、その勢い。超大事だと思う。
彼女の気持ち大事にしてね!応援してるよ!」
そう言って、電話を切った。
きっと、必死に夢追いかけてる人の中でも彼と同じ思いをした事がある人は少なくないんじゃないかと思う。
夢を追いかけること。
改めて、半端な気持ちじゃ絶対に叶えられないものだと思った。
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